Google「優先ソース」が AI 検索にも効き始めた ― 60 万ソースが選ばれ、設置は HTML 2 行
2026 年 8 月 20 日、Google は自社サイトに置ける「優先ソース」ボタンを公開しました。優先ソースは Top Stories だけでなく AI Overviews と AI Mode にも反映され、選ばれたソースは 60 万を超えています。何が変わり、日本のマーケティング担当者は何をすべきかを整理します。
2026 年 8 月 20 日、Google は「優先ソース (Preferred Sources)」を自社サイトに設置できるボタンとして公開しました。読者がそのボタンを押すと、そのサイトが Google 上でその読者の優先ソースとして登録され、読者は元のページの読んでいた位置に戻ります (Google 公式ブログ)。
見落とされやすいのですが、この機能の影響範囲は検索結果の「トップニュース」だけではありません。同じ発表の中で Google は、優先ソースが AI Overviews と AI Mode にも反映されると明記しています。AI が生成する回答の中で、読者が自分で選んだサイトが優先的に扱われるということです。
この記事では、公式発表と一次資料をもとに、何が発表されたのか、日本語環境で使えるのか、そして実務として今何をすべきかを整理します。
優先ソースとは何か
優先ソースは、もともと利用者向けの機能です。Google 検索の設定から「このサイトの記事を多めに見たい」というサイトを登録しておくと、そのサイトの記事がトップニュースなどに出やすくなります。登録は google.com/preferences/source から行えます。
従来の検索順位が「Google がそのページをどう評価したか」で決まるのに対し、優先ソースは「読者がそのサイトを名指しで選んだかどうか」で決まります。評価の主体が Google 側から読者側に移っている点が、この仕組みの本質です。
そしてこの読者側の指名が、2026 年 5 月 27 日の発表で AI の回答にも及ぶようになりました。Google は同日、優先ソースに登録されたサイトが AI Overviews の回答内でラベル付きで目立つ形になること、AI Mode でも同様に扱われることを発表しています。あわせて、話題が動いている最中のトピック向けの記事カルーセルや、他の記事から多く参照されている記事に付く「Highly Cited」バッジも導入されました (Google 公式ブログ)。
選ばれたソースは 9 か月で 90,000 から 600,000 へ
この機能がどれくらい使われているかは、Google 自身が節目ごとに数字を出しています。公式発表で確認できる推移は次のとおりです。
2025 年 12 月時点では、優先ソースは英語圏の利用者向けに提供されており、選ばれたソースは約 90,000 件でした。このとき Google は、優先ソースに登録されたサイトについて「平均してクリックが 2 倍になる」と説明しています (Google 公式ブログ)。5 月末には 345,000 件を超え、8 月 20 日の発表では 600,000 件を超えました。
数としては、まだ Google 検索全体の規模から見れば小さなものです。ただし、伸び方は加速しています。そして重要なのは母数そのものより、「登録した読者はそのサイトを 2 倍クリックする」という濃さの方です。
日本語環境でも使える
「英語圏だけの話ではないか」という疑問が当然出てきますが、これは解消済みです。Google は 2026 年 4 月 30 日に、優先ソースを対応するすべての言語へグローバル展開したと発表しており、日本語も対象に含まれています (Google 公式ブログ)。8 月に公開されたボタンも、読者の環境に合わせてラベルが自動翻訳されます。
資料請求
AIO Lens のサービス概要と、AI 検索でのブランド露出に関する調査データをまとめた資料をお送りします。法人のお客様向けのサービスです。
メールアドレスは資料送付とサービス案内 (配信停止可) に利用します。プライバシーポリシーはこちら。
設置は HTML 2 行、ただし対象はドメイン単位
実装の仕様は Google 検索セントラルの公式ドキュメントに公開されています。標準的な設置方法は 2 行です。
<head> の中にスクリプトを 1 行置きます。
<script async src="https://news.google.com/swg/js/v1/publisher.js"></script>
そしてボタンを出したい場所に空の要素を 1 行置きます。
<div google-add-preferred-source-btn></div>
これだけで、Google 純正のデザインのボタンが表示されます。data-theme="dark" または data-theme="light" で配色を、data-lang="ja" のような指定で表示言語を固定することもできます。指定がなければ閲覧者のブラウザ設定に従います。JavaScript を使いたくない場合は、https://www.google.com/preferences/source?q=example.com のような URL への通常のリンクでも代替できます。
実務上、最も注意が必要なのは対象がドメインまたはサブドメイン単位であるという制約です。公式ドキュメントは https://www.example.com/ や https://code.example.com/ は対象になる一方、https://www.example.com/blog のようなサブディレクトリは対象外だと明記しています。自社サイトのサブディレクトリでブログを運用している場合、読者が優先ソースとして登録するのはサイト全体であってブログ単体ではありません。
もう一点、公式ドキュメントはこのボタンの設置が優先ソースとして扱われるための必須条件ではないとも書いています。ボタンはあくまで、読者に登録という選択肢があることを知らせるための導線です。
なぜ今、この機能に注目する価値があるのか
背景には、検索からサイトへの流入が実際に減っているという事実があります。Chartbeat の調査を Axios が 2026 年 3 月 17 日に報じたところによれば、過去 2 年間で検索経由の流入は、小規模サイト (1 日 1,000〜10,000 ページビュー) で 60%、中規模サイト (同 10,000〜100,000) で 47%、大規模サイト (同 100,000 以上) で 22% 減少しました。規模が小さいほど打撃が大きいという結果です。
同じ調査では、2024 年 12 月から 2025 年 12 月にかけて Google 検索からのページビューが 34%、Google Discover からが 15% 減ったこと、その一方で ChatGPT からの流入は 200% 以上増えたものの、チャットボット経由は依然として全体の 1% にも満たないことも示されています。つまり、検索で失った分を AI からの流入が埋めている状況にはまだなっていません。
法廷でも同種の主張が出ています。Rolling Stone や Variety を擁する Penske Media は 2025 年 9 月に Google を反トラスト法違反で提訴し、以前なら自社サイトへの訪問につながっていた検索の約 5 件に 1 件で AI Overviews が表示されるようになった結果、2024 年末までにアフィリエイト収益が 3 分の 1 減ったと主張しています (eMarketer、Columbia Journalism Review)。
こうした流れの中で優先ソースを見ると、位置づけがはっきりします。Google が提示しているのは、検索順位を通じた流入とは別に、読者との直接の関係を通じて AI 検索の中でも扱われ続ける経路です。従来の被リンクが「他のサイトからの評価」だったのに対し、優先ソースは「自社の読者からの指名」であり、獲得の主戦場が外部サイトから自社サイトの上に移っています。
過大評価しないための注意点
最後に、この機能を万能視しないための前提を 3 つ挙げておきます。
第一に、優先ソースは検索順位そのものを操作する仕組みではありません。効くのは、その機能を使っている読者の検索結果と AI の回答の中だけです。登録していない大多数の利用者の画面は変わりません。
第二に、Google の説明の中心はトップニュースであり、報道性の高いコンテンツとの相性がよい仕組みです。B2B の製品ページや導入事例のように、ニュース性の低いコンテンツでどこまで効くのかは、現時点で公表されたデータがありません。
第三に、600,000 件という数字は世界全体の累計であり、日本語圏でどれだけ使われているかは公表されていません。日本の利用者にどこまで浸透しているかは、今後の発表を待つ必要があります。
それでも、設置コストが HTML 2 行である以上、費用対効果の判断は難しくありません。AI の回答の中で自社が扱われるかどうかを左右する要素が一つ増えた、という事実を押さえたうえで、置ける場所には置いておくのが妥当な判断だと考えられます。