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データ分析Reddit

54,802 件の履歴で調査 ― ChatGPT が公式サイトの情報を優先する傾向が鮮明に

2026 年 8 月、Reddit の ChatGPT 参照シェアが 86% 減りました。AI が回答前に実行する検索クエリ 54,802 件を分析すると、ChatGPT の 46.8% が site: 演算子つきで、名指しされる先の 35.3% は企業の公式サイト、口コミ系は 1.2% でした。そして site: を多用し始めた本当の日は 8 月ではありませんでした。

2026 年 8 月 20 日、Reddit が ChatGPT の回答から事実上消えたというニュースが流れました。ChatGPT Search が参照する情報源に占める Reddit の割合が、8 月 8 日から 14 日にかけて 3.8% から 0.5% へと、86% 落ちたという内容です。ForbesAxios が相次いで報じ、Reddit の株価も下げました。

同じ期間、Google の AI Overview での Reddit の割合は 2.37% から 2.10% へ 11.3% 減にとどまっています。業界全体で Reddit の価値が下がったのではなく、OpenAI 側だけで起きた変化です。原因として説明されているのは、ChatGPT が回答前に実行する検索の仕方が変わり、site: 演算子でドメインを名指しする形が増えたことです。

この話は日本のマーケティング担当者にとって、Reddit の話として読むと何も起きません。日本語圏で Reddit を気にしている人はほとんどいないからです。しかし「AI が回答の根拠にするサイトの顔ぶれは、告知なしに一晩で入れ替わる」「そのとき最初に席を失うのはユーザー投稿型のサイトである」という話として読むと、他人事ではなくなります。

AIO Lens は複数の AI に毎日同じ質問を投げ、回答と一緒に「AI が裏側で実行した検索クエリ」と「参照したページ」を記録しています。この記事では、そのデータでニュースの説明を検算します。結論を先に書くと、検算の結果はニュースの説明と食い違いました。

日本語で追っている限り、Reddit にはもともと席が無い

まず前提の確認です。2026 年 3 月から 8 月までの半年間に、追跡中の AI が参照したページは延べ 411,651 件ありました。このうち reddit.com は 258 件、全体の 0.06% です。月ごとに見ても最大で月 82 件しかありません。

日本語の質問に日本語で答える場面において、Reddit は最初から選択肢に入っていませんでした。したがって「Reddit が 86% 減った」という出来事そのものは、日本語圏の露出には直接影響しません。

では日本語圏で Reddit の位置にいるサイト、つまり利用者が書き込む口コミ系・掲示板系のドメインはどうなっているか。同じ半年で見ると、参照全体に占める割合は次のように推移しています。

3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月
口コミ・投稿型ドメインの参照シェア 0.42% 0.58% 0.42% 0.62% 0.60% 0.80%

減っていません。むしろ 8 月が最も高い水準です。ただし、そもそもの水準が 1% 未満です。日本語圏では口コミ系サイトは崩落する以前に、AI の参照先としてほとんど場所を持っていません。

ChatGPT は検索クエリの 46.8% で site: を使っている

ニュースが原因として挙げた site: 演算子の話に入ります。site: は検索対象を特定のドメインの中だけに絞る書き方です。site:example.com 料金 と書けば、example.com の中の料金に関するページだけが対象になります。

2026 年 7 月 15 日から 8 月 14 日までの 30 日間に記録された検索クエリ 54,802 件を、AI 別に集計しました。内訳は ChatGPT が 35,543 件、Gemini が 10,411 件、Claude が 8,848 件です。Google の AI Overview は回答と参照リンクは取得できますが内部の検索クエリを外に出さないため、この集計には含まれていません。

ChatGPT Gemini Claude
site: 演算子を含む 46.8% 0.1% 0.0%
「公式」または official を含む 38.0% 0.3% 0.5%
年号 (2025・2026) を含む 29.1% 14.2% 29.1%

ChatGPT だけが突出しています。35,543 件のうち 16,631 件が site: つきで、名指しされたドメインは 2,831 種類ありました。Gemini と Claude は site: をほぼ使わず、人間が打つのに近い自然な日本語で検索しています。

つまり site: の多用は「AI 全般の新しい流儀」ではなく、現時点では ChatGPT に固有の振る舞いです。

site: を使い始めた本当の日は 8 月ではなかった

ここからが検算の本題です。ニュースは、8 月 8 日から 14 日の間に ChatGPT の検索の仕方が site: 中心に変わり、その結果 Reddit が参照されなくなったと説明しています。もしそうなら、同じ期間に site: を含むクエリの割合が跳ね上がっているはずです。

日次で見ると、そうはなっていませんでした。

ChatGPT の検索クエリに占める site: 演算子の割合 (日次)6 月 25 日から 7 月 9 日までは毎日 0 から 2 パーセント台で推移し、7 月 10 日に 42.2 パーセントへ跳ね上がり、以降 7 月 15 日まで 38 から 47 パーセントで推移している0%10%20%30%40%50%7/10 5.6 世代を導入0.2%42.2%6/257/17/107/15
ChatGPT が回答前に実行した検索クエリのうち、site: 演算子を含む割合 (日次)。6 月 28 日と 7 月 5 日は追跡の実行がなく、データがありません。

跳ね上がったのは 7 月 10 日です。それ以前の 2 週間は毎日 0〜2% で、7 月 9 日は 0.2% でした。そして 7 月 10 日以降は 8 月末まで 44〜48% で横ばいです。ニュースが指す 8 月 8 日から 14 日の週も、その前の週の 45.3% に対して 44.3% と、ほとんど動いていません。

では 7 月 10 日に何があったのか。この日、私たちは毎日の追跡に OpenAI の 5.6 世代のモデルを導入しました。質問文も追跡対象も変えていません。変えたのはモデルだけです。さらに 8 月 11 日、ChatGPT で実際に使われている 5.6 世代のモデルに追跡側を合わせたときも、site: の割合は 44% 台のまま動きませんでした。世代の中でモデルを変えても、探し方は変わらないということです。

読み取れるのは、site: でドメインを名指しする探し方は、ある日を境に一斉に切り替わった仕様変更というより、モデルの世代に付随する性質だということです。5.6 世代より前のモデルはほとんど使わず、5.6 世代は半数近くで使う。どちらのモデルが自分の質問に割り当てられているかで、AI の探し方は変わります。

この検算には 3 つの限界があります。第一に、7 月 10 日の切り替えではモデルと同時に推論の深さの設定も変えているため、どちらが効いたかを分離できていません。第二に、私たちが観測しているのは API 経由の実行であり、報道が対象にしている ChatGPT 製品版とは配信されるモデルも設定も別系統です。したがって「8 月に OpenAI が何も変えなかった」と言うことはできません。第三に、自社データの Reddit は月あたり数十件しかなく、8 月の崩落が起きたかどうかを検定できる量ではありません。

言えるのはここまでです。site: 中心の探索は 8 月に突然生まれたものではなく、少なくとも API 側では 1 か月以上前から、モデル世代の違いとして観測できていた。 そして日本語圏の追跡では、8 月に探し方が変わった形跡は見えませんでした。

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site: で名指しされるのは誰か

site: 中心の探索が口コミサイトにとって何を意味するのか、指名先の内訳を見ると分かります。7 月 15 日から 8 月 14 日までに ChatGPT が site: で名指しした 16,631 件を、ドメインの種類で分類しました。

ChatGPT が site: で名指ししたドメインの種類別内訳企業の co.jp が 35.3 パーセント、com が 23.7 パーセント、官公庁の go.jp が 6.7 パーセント、口コミ・投稿型サイトが 1.2 パーセント企業の .co.jp35.3%.com23.7%官公庁の .go.jp6.7%口コミ・投稿型サイト1.2%
2026 年 7 月 15 日から 8 月 14 日に ChatGPT が site: で名指しした 16,631 件の内訳。名指しされたドメインは 2,831 種類ありました。

site: を使うということは、検索する前に「どのサイトを見に行くか」をモデルが決めているということです。決め打ちの相手は企業の公式サイトと官公庁で、口コミ系は 1.2% しか指名されません。

ここが重要な点です。site: 中心の探索では、口コミサイトは中身の良し悪しを評価される前に、そもそも検索の対象に入りません。Reddit に起きたのは「評価が下がった」ことではなく、探索の入口で呼ばれなくなったことだと考えるほうが説明として素直です。同じことは、日本の口コミサイトや比較メディアにも構造的に起こりえます。

Claude と Gemini は「まとめ」を探しに行く

一方で、AI 全部が公式サイト直行になったわけではありません。Claude と Gemini の探し方は対照的です。

クエリに含まれる語 ChatGPT Gemini Claude
比較 1.6% 16.0% 26.9%
おすすめ 0.5% 15.5% 19.9%
ランキング 1.4% 3.8% 10.2%

Claude はクエリの 4 分の 1 以上に「比較」が入り、5 分の 1 に「おすすめ」が入ります。この 2 つの AI は比較記事やおすすめ記事を探しに行っており、そこに名前が載っていない会社は候補にすら上がりません。

なお ChatGPT の「比較」1.6% は、ChatGPT が比較をしないという意味ではありません。比較という作業を個々の事実確認に分解しているため、クエリの表面に「比較」という語が出てこないだけです。

口コミという言葉自体、AI はほとんど検索していない

もう 1 つ補足します。54,802 件のクエリのうち、「口コミ」「評判」「レビュー」を含むものは 118 件、全体の 0.2% しかありませんでした。

SEO では口コミ・評判は重要なキーワード群として扱われますが、AI が回答を書くために叩く検索では、ほとんど使われていません。参照先としての口コミサイトのシェアが 1% 未満であることと、検索の入口で口コミという語が使われないことは、同じ現象の裏表です。

ただしこの数字は語の一致で数えたものであり、検索の意図を判定したものではありません。別の言い回しで評判を探しているクエリは漏れます。site: の 46.8% が「演算子が書かれているか否か」という明確な事実であるのに対し、この 0.2% は参考値として見てください。

何をしておくべきか

今回の一連の観測から言えることは 3 つです。

第一に、特定のプラットフォームに依存した AI 露出は、告知なしに消えます。 Reddit の 86% 減は OpenAI からの事前アナウンスなしに起き、当事者は数字が落ちてから気づきました。そして今回の検算が示すように、探し方はモデルが差し替わるだけでも変わります。どこか一箇所に露出を集中させている状態は、それ自体がリスクです。

第二に、公式サイトが名指しで読まれる状態を作ることが、唯一の直接的な防衛線です。 ChatGPT は site: の 35.3% を企業の公式サイトに向けています。価格・条件・仕様といった具体的な事実が、画像の中ではなくテキストとして、いつ時点の情報かが分かる形で、目的別のページに分かれて置かれているかどうか。これは外部の都合で消えない資産です。

第三に、外部メディアでの露出も引き続き必要です。 Claude と Gemini は比較記事とおすすめ記事を探しに行きます。公式サイトの整備は ChatGPT に効き、外部露出は Claude と Gemini に効く。どちらか一方では足りません。

そして前提として、こうした変化は継続的に測っていなければ気づけません。Reddit の件も、毎日同じ条件で観測していた第三者がいたから 1 週間で表に出ました。自社が AI にどう扱われているかも、ある日の 1 回のチェックでは分かりません。

まとめ

  • 2026 年 8 月、Reddit の ChatGPT 参照シェアは 3.8% から 0.5% へ 86% 減った。Google の AI Overview では 11.3% 減にとどまり、OpenAI 固有の変化だった
  • 日本語圏の追跡では Reddit は半年で 258 件 (0.06%) しかなく、口コミ・投稿型ドメイン全体でも参照シェアは 1% 未満で推移している
  • ChatGPT は検索クエリの 46.8% で site: を使い、名指し先の 35.3% は企業の公式サイト、口コミ系は 1.2% にとどまる
  • その site: 中心の探索が始まったのは 8 月ではなく、追跡に 5.6 世代のモデルを導入した 7 月 10 日だった。探し方は仕様変更だけでなくモデル世代によっても変わる
  • 口コミサイト頼みの露出は、評価される前に探索の入口で呼ばれなくなる形で失われる。公式サイトの情報整備と外部メディアでの露出を、別々の施策として持っておく必要がある

AIO Lens では、AI が実行した検索クエリと参照したページを毎日記録し、自社がどの AI にどう扱われているかを継続的に追跡できます。